16.3. 植物の多様性
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植物進化の注目点
現生の植物の多様性で明らかになっている植物進化の4つの主要段階の年代記が化石により記録されている
1) およそ4億7500万年前に植物が藻類の祖先から起源した後、蘚類、タイ類、ツノゴケ類を含む非維管束植物において初期段階の多様化が起きた
これらのコケ植物 bryophyteとよばれている植物群は、本当の根と葉をもたない
コケ植物はまたリグニンも持たないため、コケ植物には直立させる支持が弱い
蘚類 mosses
最も馴染み深いコケ植物
蘚類のマットは実際、びっしり詰まった多数の植物体からなり、たがいを支え合っている
配偶子と胚を保護する配偶子嚢は、コケ植物に期限した陸上への適応
2) およそ4億2500万年前に始まった維管束植物の多様化
リグニンで堅くなった通道組織の存在により、維管束植物はより高く成長することが可能になり、地上からかなりの高さにそびえ立つことになった
最も初期の維管束植物は種子をもたなかった
今日、シダ類 fermsをはじめとしたいくつかの維管束植物群に見られる
3) およそ3億6000万年前に始まった種子の起源
種子 seed
保護カバーの内部に栄養の蓄積とともに入れられた胚からなる
胚はさらに乾燥や他の傷害から保護され、陸上への定着を進めた
裸子植物 gymnosperm
初期の種子植物は特殊化した部屋に入っていなかった
今日、最も広く分布し多様化したのは、おもにマツのような球果をつける球果類
4) 少なくとも1億4000万年前の顕花植物、すなわち、被子植物 angiospermsの出現
花 flower
子房とよばれる保護室の中に種子をつける複合生殖器官
現生植物の大多数は、すべての果実や野菜、穀物を含む被子植物
コケ植物
コケ植物の蘚類は、何エーカーもの土地をマット上に広がることもある
蘚類は、陸上への進出を可能にした重要な陸上への適応のうちの2つを示す
1) 乾燥を防ぐロウ質のクチクラ層
2) 母植物の配偶子嚢内で発生する胚
しかし、蘚類は水中生活をしていた祖先から完全に解放されていない
精子が雌配偶子嚢内の卵に達するには泳ぐ必要があるので、蘚類の生殖には水が必要
雨水または露の薄い膜で充分
そのうえ、蘚類は土壌から地上部へ水を運ぶ維管束組織をもたないため、湿った日陰になった場所に生息する必要がある
蘚類のマットを詳しく観察すると、2つの異なった形があることがわかる
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配偶体 gametophyte
よりはっきりとした緑のスポンジのような植物体
配偶体の細胞は一倍体
配偶子(精子と卵)を生産する
配偶子は接合子をつくるためには他の配偶子と融合しなければならない
配偶子は湿った環境に留まっていなければならない
胞子体 sporophyte
配偶体から伸びている柄で、その先端に胞子嚢がついている
胞子体の細胞は二倍体
胞子 sporeを生産する
胞子は他の細胞と融合することなく、新しい個体に発生することができる
胞子は通常、厳しい環境に耐えることができる堅い被膜を持っている
配偶体と胞子体は、交代でたがいを生産する世代交代をする
配偶体は配偶子を生産し、他の配偶子と融合することにより、新しい胞子体に発達する接合子となる
胞子体は、新しい配偶体を作り出す胞子を生産する
世代交代 alternation of generation
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この生活環は植物と多細胞の緑藻だけで見られる
植物の中で、コケ植物のみが大きく目立つ配偶体をもつ
さらに植物について勉強していくと、胞子体がより高度に分化し優占する世代となっていくことがわかる
シダ植物
シダは、維管束組織の進化により、地上環境への適応の次のレベルに達した
シダは、1万2000以上の既知種がある、非常に多様化した無種子維管束植物
しかし、シダの精子は、コケと同様に鞭毛をもち、卵と受精するため、水の薄い層を通って泳いでいかなければならない
多くのシダは熱帯地方に分布するが、温帯の森林にも多くの種が見つかる
およそ3.6億から3億年前の石炭紀の間に、古代のシダは、現在のユーラシアから北アメリカに広がった広大な湿地の熱帯雨林を作っていた非常に大きな多様性をもった無種子植物の一部を構成していた
植物は枯れた後、よどんだ湿地に沈んで、完全には腐敗しなかった
遺体は、泥炭とよばれている厚い有機堆積物を形成した
後に、海水が沼に入り、海洋の沈殿物が泥炭を覆った
そして、圧力と熱により泥炭は徐々に石炭に変わった
化石燃料 fossil fuel
石炭, 石油, 天然ガスは太古に死んだ有機体の残骸から生じた
裸子植物
石炭紀の終わりの近くまで「石炭の森」が北アメリカとユーラシア大陸の景観を優占していた
その当時、世界的な気候はより乾燥して冷たくなり、広大な沼は消え始めた
この気候変動は、乾燥した陸地で生活環を完結でき厳しい冬に耐えることのできる種子植物に機会を提供した
初期の種子植物の中で、最も成功したものは裸子植物であった
そして、たくさんの種類が、石炭紀の沼地で無種子植物とともに生育していた
彼らの子孫には、針葉樹類すなわち球果類がある
球果類
マツ、モミ、トウヒ、ビャクシン、スギやアメリカスギといった針葉樹は、すべて球果類
球果類の幅広い分布タイは、北ユーラシアから北アメリカの多くを覆い、山岳地方を下り南方へと分布している
球果類は、地球上で最も背が高く、最も巨大で、最も長生きの生物
北カリフォルニア沿岸に生育するセコイアは、世界で最も高い木
2006年に発見された3本のセコイアの木は、高さが110m以上もある
現生で最も巨大な生物は、カリフォルニアのシエラネバダ山脈に生育するセコイアオスギでおよそ84m
イガゴヨウマツは、現生で最も長生きの生物
メトセラという名前がつけられた木は、推定樹齢4600年以上
多くの針葉樹は常緑樹
1年を通して葉をつけている
冬の間でさえ限られた量ではあるが光合成を行う
春が来ると、針葉樹はすでにより強い日差しを利用可能な葉を完全に発達させている
マツとモミの針状葉は、乾季を生き残るのにも適している
厚い表皮が草を覆い、気孔はくぼみの中にあって水の損失をさらに減らす
針葉樹林は大変生産性がたかく、我々はおそらく毎日、針葉樹からつくられている製品を使用している
針葉樹はパルプを提供している
我々が材とよんでいるものは、実は木に支持構造を与えるリグニンが維管束組織に蓄積したもの
種子植物の陸上環境への適応
シダと比較して、多くの裸子植物は、多様な陸上環境での生存を可能にする3つの新たな適応をもっている
1) 配偶体のさらなる縮小
2) 花粉
3) 種子
最初の適応は、一倍体の配偶体と比較して、二倍体の胞子体がより大きく発達すること
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マツなどの針葉樹は、球果内に小さな配偶体を持つ胞子体
コケ植物やシダと対照的に、裸子植物の配偶体は、親植物の胞子体組織に依存し、保護されている
第二の適応は、花粉の進化
花粉粒 pollen grain
非常に小型化した雄性配偶体であり、精細胞に発達する細胞を内包している
針葉樹の場合、花粉は雄性球果から卵が発達する雌性球果まで風により運ばれる
この精細胞の移動のためのメカニズムは、コケとシダがもつ水中を泳ぐ精子と対照をなす
第三の適応は、種子そのもの
種子は保護壁とその内側に養分とともに内包された胚で構成される
種子は胚珠 ovuleとよばれている構造から発達する
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針葉樹において、胚珠は雌性球果の鱗片上にできる
球果類をはじめとした裸子植物は子房をもたず、球果の鱗片上に「裸の」種子をつける
一旦親植物から散布されると、種子は数年間休眠することもある
種子は良好な環境下で発芽 germinateすることが可能
その胚は種皮を破って種子より出てきて実生となる
被子植物
被子植物は現代の陸上景観を優占している
裸子植物が約700種に対し、被子植物は約25万種
被子植物は多くの独特な適応により成功している
維管束組織の改良により、裸子植物よりも水輸送をずっと効率的にしている
すべての陸上環境への適応の中で、被子植物が他に比類なく成功できた原因は花
花、果実と被子植物の生活環
被子植物は、どんな生物より強力なセックスアピールを行っている
バラからタンポポまで、花は植物の生殖器官の存在を誇示している
多くの被子植物にとって、花を咲かせて目立つことにより、花粉を押す雄性生殖器官から雌性生殖器官に運んでくれる昆虫や他の動物を惹きつけている
動物に花粉運搬を依存することにより、不確実な風に比べて同種の他個体に確実に花粉を運ぶ目的を達成している
花は、がく片、花弁、雄ずいと心皮という4輪の変形した葉をつける短い茎
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がく片 sepal
花の最外輪にあり、通常緑色
がく片は、開花以前に花を囲み込んでいる
花弁 petal
がく片の内側にある
しばしばカラフルで、昆虫などの送粉者を惹き付ける役割を果たしている
生殖のための実際の構造は、複数の雄ずいと1つああるいは複数の心皮
雄ずい stamen
葯(やく) anther
内部で花粉が発達する嚢
花糸 filament
葯を支える柄
心皮 carpel
花柱 style
柄の部分
柱頭 stigma
粘着性で花粉をとらえる先端部
子房 ovary
胚珠を中に含む保護器官であり、卵は胚珠の中で発達する
心皮は1枚の葉に対応する器官で、単独あるいは複数が合着して雌ずいを形成する
被子植物の生活環
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1) 花は、胞子体植物の一部
裸子植物の場合のように、花粉粒は被子植物の雄性配偶体
雌性配偶体、すなわち胚嚢は、子房の中に置かれている胚珠内にある
2) 心皮の粘り気のある柱頭に到達した花粉粒は花粉管を胚珠まで伸ばす
3) 胚嚢の中に2つの精細胞を放出する
この重複受精 double fertilizationは被子植物の特徴
精細胞の1つは、胚嚢中の卵細胞と受精し,
4) 接合子となり,
5) 胚に到達する
2つめの精細胞は別の雌性配偶体細胞と「受精」し、胚乳 endospermとよばれる栄養分を蓄積する組織に発達して胚を養う
したがって、重複受精により、胚珠内で胚と養分貯蔵組織の発達を同期させる
6) 胚珠全体は種子へと発達する
種子が子房に包まれるのは、被子植物と裸の種子をもつ裸子植物を区別する特徴
果実 fruit
花の子房が成熟したもの
胚珠が種子に発達するに従い、子房壁は厚くなり、種子を囲む果実となる
エンドウのさやは果実の一例
果実は種子を保護し、散布を助ける
多くの被子植物は種子散布を動物に依存している
大部分の動物は、直接または間接的に、被子植物を食物源として依存している
風散布
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動物付着散布
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動物被食散布
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被子植物と農業
裸子植物が林木と紙の大部分を供給するのに対して、被子植物は我々の食物とウシやニワトリのような家畜の餌のほぼすべてを供給する
植物界の90%以上は被子植物であり、コムギやトウモロコシのような穀物、カンキツ類や他の果樹、野菜や綿を含む
トマト、カボチャ、イチゴやオレンジをはじめとした多くの種類の農産物は、果実が食用になるように栽培化された植物
被子植物である樫や桜、胡桃のような緻密な硬材は、針葉樹から得られる材木を補完する
また、繊維や薬物、香水、装飾のためにも被子植物を栽培する
初期の人類は、おそらく野生の種子と果実を集めていたであろう
より確実な食物源を得るため、人々は種をまき植物を栽培し始め、農業は徐々に発展していった
再生不能資源としての植物多様性
植物の種が先例のない速度で絶滅している
この問題は特に人類の半分以上が住み、人口増加率が高い熱帯地方で深刻
熱帯雨林は恐ろしい速さで破壊されている
この破壊で最も一般的な原因は、焼き畑式農業(焼畑農業)
毎年約20万平方キロメートルの消失
これは25年以内に地球の熱帯雨林を完全に消滅させる速度
森林が消失すると、何千もの植物種も絶滅し、これらの植物に依存する昆虫や他の動物もいなくなる
熱帯雨林や他の生態系の生息地の破壊により、毎年何百種もが絶滅していると見積もられている
熱帯地方は最も多くの生物種が暮らしているため、損失は最も大きい
しかし、人類は環境への圧迫をずっと続けてきた
ヨーロッパ人は数世前に大部分の森林を破壊した
北アメリカで多くの種が危険にさらされている
多くの人々は、生物の絶滅に関与することに対して倫理的懸念を持つ
しかし、植物多様性の損失について憂慮する実際的な理由もある
我々は何千もの製品を植物に依存している
120以上の処方薬は、植物から抽出されている
研究者は潜在的な薬用資源である30万の植物既知種のうち、5000種以下しか調査していない
製薬会社は、地域民族が伝統薬を調合する際に使う植物により、大部分の薬用植物を特定してきた
現在、化学者たちは植物多様性の消失を遅らせるために力を合わせている
たとえば、森林から利益を得るための破壊的ではない方法を提案している
我々が提案する解決法は、経済的に現実的でなければならない
→16.4. 菌類(真菌)